JOGMECボツワナ事務所リモートセンシングセンター副所長による現地レポート
はじめに,“資源探査”という言葉自体、聞きなれない言葉だと思います。それ以前に、そもそも地質調査って何ですか?と聞かれることが多く、考古学と勘違いされることもあり、なかなか説明してもピンこないのが、この仕事だと思います。一応、“資源探査”という仕事は、科学といわれる分野(理系)には、分類されるようですが、地質学(含む資源探査)はサイエンスではなく、基本的には、根性と情熱勝負で、ローテク(ハイテクの反対)がモノを言う仕事---石を見て、触って、舐めて(舌を使うと、結構いろんなことが分かります)なんぼの世界---だと思っています。訳のわからない説明ですが、でも、そうだと私は思います。
前置きが長くなりましたが、在アンゴラ日本大使館の皆様の協力も得つつ、ようやく現地調査ができた(1年越し!)、アンゴラ南部での調査の様子について、紹介させていただきたいと思います。
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調査地域その1
アンゴラ南部のとある漁村を朝6時半に出発。未舗装道路を進むこと約1時間。今日の調査地域の入り口付近に到着。道路沿いに車を止め、アンゴラ地質調査所、国家地雷除去院のメンバーと共に準備を整える。今日も暑くなりそうだ・・・。 |
道路脇(?)に車を止め、調査準備中 |
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GPSは、最初の目的地まで直線で約3 km程度であることを示している。が、最奥までは8 km・・・。これ最初に言ってしまうと、みんなの元気がなくなりそうなので、黙っておく。さて、さて、出発進行!!低木のなかをずんずん歩くうちに、時間ととともに日差しが強くなり暑くなってきた。最初の地点までは問題なく行きつく。衛星画像で予想された通りの示徴であり、まずまず。さて、次の地点までは、およそ4 kmであることをGPSが示している。楽勝!楽勝1時間ぐらいかなぁと言ってみるも、行く手は、トゲドゲの低木が生い茂る藪。むむむ・・・。ここまで来て、撤退はあり得ない。去年から、ずーーーっと見たかった何かが、この藪の向こうにあると信じ進む(これが根性?執念?)。いくつかの枯れ沢や藪を超え、ようやく最奥部の入り口の到着。だけど、ちょっとがっかり・・・。衛星画像上の示徴を十分説明できる岩石の分布は確認できるものの、肝心の探していた鉱物の示徴に乏しい・・・。この時点で、地質調査所の何人かは、バテ気味。帰りのことも考え、無理に全員最奥まで進む必要はないと判断し、最後は、地質調査所1名+国家地雷除去院の4名+私の6名で残り数kmを歩き、小高い丘を目指す。中腹まで登ったところで、これ以上先に進む必要はないと判断。この丘自体にも、なんらかの金属鉱物の示徴を期待していたが、ただの花崗岩。まぁ、仕方がない。よくあることだ。だけど、悔しい・・・。衛星画像はいつも正しい・・・そして、いつも私の解釈が間違っているのだ。いままで、何度このような失敗を重ねたことか・・・。だけど、何度かに1度本当に大当たりする。その時はやっぱり、素直に嬉しい。だから、こうやっていつも歩いてこれるんだと思う。
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調査地域内の丘の中腹からの眺望。道路は見えない・・・。 |
昼ごはんの時間を使い、もうちょっと登ってみると、視界が開けた。景色は圧巻であるが、GPSは、車まで直線でもおよそ9 kmを示しており(おそらく道なりでは10 km以上だろう)、私も含めて、熱中症や脱水症状を訴える人がでるのではと、本気で心配になってきた。
13時ごろ、最奥を出発、道路に辿りついたのは、16時前。みんなバテバテで、水を浴びるように飲み、今日の宿泊地である次の集落へ移動。次の集落には、小さなお店(キオスクみたいなもの)があって、きっとつめたいジュースやビール、食べものがあるであろうと期待しながら向かう。車に揺られること2時間、集落に到着。走るように期待に胸を膨らませ、お店に向かうが、肝心のお店は、店主がどっかに行っていて、閉まったまま・・・。待てども待てども店主は帰ってこない・・・、そ、そんなぁ・・・。
結局この夜の晩御飯は、行動食である缶詰&ビスケットか?と思いきや、なんとか、フンジ(メイズ)と缶詰のソーセージにありつけた。普段、特別おいしいと思えないものでも、なぜか、野外でたべるとすごくおいしいのはなぜだろうか。明日は、登山。睡眠時間確保のため、星空を眺めながら寝袋で寝る(いびき対策。だってうるさいんだもん・・・苦笑)。
(つづく)
調査地域その2
夜空を見ながら寝たのはいいが、時々、わん公さんが私をクンクンしに来たので、結局のところ、熟睡とまではいかなかった。日の出前に準備を整え、案内人のお兄さんが来るのを待って、出発。見るからに急峻な山で、登りがキツイことが予想されるのに、平地であるのをいいことに、みんなとばす、とばす!内心、あとで泣きを見るぞ!と思いながら、私は、一人トボトボ歩いていると、みんなが、「大丈夫か?荷物持とうか?」と変に心配してくれる。今日は、登りがキツイからゆっくり歩いたほうがいいと言っても、誰も信じようとはせず、へっちゃらモード。もう、知らない・・・。
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日本の山里の雑木林を彷彿とさせる林の中を進む。このころは、まだみんな元気。 |
登りが始まると、急にみんなの口数が少なくなる。結局、途中で脱落者が出て、昨日と同じメンバーで先に行く。仕方がない。無理は禁物。登るにつれて、樹木が少なくなり、いつしか、雑木林ともお別れ、岩肌の露出した岩領帯に入る。道々、石を見るとなかなかいい感で、簡易測定でもそこそこ何かが期待できる数値を示している。あとは、鉱化作用の器としての石が見つかるかどうか?それを確かめるために、先に進む。
登り始めて約5時間。ようやく頂上手前の高原状のエリアまで到達するも、下山と次の場所への移動を考えるとこのあたりが限界か・・・とそろそろ考えだしたころ、何気に山肌に目をやると・・・!これ、これ、これだよ!君に会いたかったんだよ!早速、簡易測定すると、フムフムいい値を示しているではないか。よしよし!!しかし、ここで悩む。もうちょっと先に進んで、その全貌を確認したい気持ちと、さりとて、そこに行ってしまえば、下山は夕方。移動は絶望的・・・。いろいろ考えて、最低限の試料を採取し、下山することを決断。次回は、キャンプ道具をもちこんで、頂上付近で2泊~3泊の計画で出直す必要があるが、少なくとも、次につながるであろう結果は十分に得られたように思う。ああ、来てよかった。昨日の残念・無念は、少しだけ報われた。神様、ありがとう!と、思ったのもつかの間、炎天下の中の下山が待っていた。ああ、なんで、こんなに遠い・・・なんで、こんなに登ってきたのか・・・。
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斜度のある斜面を進む。地元の村民の人は、頂上まで4-5時間で登りきるという。 |
こうして、調査はまだまだ続くのである。 |
終わりに
はたして、これが真の資源探査の姿なのかどうかよくわかりませんが、なんとなく、体力勝負、どこでも寝られる、なんでも食らべれる、ちょっと根性がある、繊細な人ではなく多少なりともいい加減さを兼ね備えている人がこの仕事でやっていけそうなことが分かったあなた、そうです、アナタは、この業界でやっていけます!!
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