アンゴラの新鉱業法(Código Mineiro)概要
平成24年10月
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その完全性・正確性・
有用性・安全性等について外務省・大使館が保証するものではありません(参考:法的事項)。
実際の手続き等にかかる詳細等は,アンゴラ側当局に直接確認する必要があります。
2011年9月,新鉱業法(Código Mineiro, 法令第31/11号)がアンゴラ議会で承認され,同年12月に発効されました。
本法律は,これまで存在していた鉱業に関する旧法令(鉱業法,ダイアモンド法,鉱業税法等,第5条参照)を廃止し,新たに統合しなおしたものとなっています。
1 アンゴラの鉱物資源開発と法制定の背景
アンゴラ鉱物資源開発は,石油を主とします。特に収入に対する石油の割合は多く,2011年はGDPの約46%を占めました。一方,ダイアモンド・その他の鉱物資源のGDPに対する割合は未だ小さく,2004-2011年の平均は1%を下回っています。
しかしながら,アンゴラ政府は,石油依存型経済からの脱却,持続可能な経済の達成に向けて,鉱物資源開発を重要なセクターとみなしています。2008-11年の3年で,アンゴラ鉱業セクターは11.8%の成長率を記録しました。アンゴラには45から50の鉱物資源が存在すると言われており,国際社会からのアンゴラの鉱物資源に対する関心も高まっています。
このような背景のもと,鉱業セクターにおける国際的競争力の強化に向け,鉱業権取得メカニズムの明確化や権利の保護規則の設定をすべく,新鉱業法は制定されました。
他方,アンゴラは独立から36年弱経過しましたが,地質情報やポテンシャルについては未だ十分に解明されていません。また鉱物資源開発に直結する,地質鉱物学における技術者の育成も不十分と言われており,質の高い人材の育成が重要視されています。
さらに鉱物資源を輸送する上で,インフラ開発も重要と政府は考えており,現在,政府は道路整備,エネルギー,水分野にもフォーカスしています。
2 鉱業権とは
地質調査,地質図作成,確認探鉱(reconhecimento),探査(prospecção),探鉱(pesquisa),評価(avaliação),開発(exploracao),加工(tratamento),選鉱(beneficiação),鉱物資源の販売(comercialização)に対する,行政府により与えられる権限を指します(法令ANEXO I 12.)。
参考:定義(法令ANEXO I)
■確認探鉱(Reconhecimento):地質探査,地質図,事前調査等によって,鉱物資源を有する可能性が高い地域を識別した後に行う調査。より綿密な調査によって証明される鉱物資源含有範囲を探し出すことを目的とする。
■探査(prospecção):ポテンシャルの高い領域を境界画定する,システム化された鉱床探索プロセス。使用される手法として露頭の識別,地質図作成,地球物理学・地球科学等があげられる。
■探鉱(Pesquisa):識別された堆積物に対する境界画定の第1プロセス。表層地質図作成,サンプリング,含有量・質等に対する事前評価等を行う。一般調査。
■評価(avaliação):堆積物の詳細な境界画定。サンプリング取得およびその詳細研究。
■開発(exploração):確認調査(reconhecimento), prospecção, pesquisa, avaliaçãoの後に行う活動で,製錬(preparação)と採掘(extracção),積出し(carregamento e transporte),加工(tratamento)等を含む。 |
3 目的(第1条)
本法は,アンゴラ管轄下の領土・領海(地表,地下,内水,大陸棚,排他的経済水域等)における,地質鉱業活動(地質調査,発見,分類,評価,開発,販売,使用,利用等)や,権利取得,行使および義務の施行に対するアクセスについて規定しています。
ただし,炭化水素液/ガスの鉱業活動は,除外されています(第3条)。
4 政府の関与
政府は,鉱業の開発および販売権を譲許する際,以下の形での関与が認められています(第11条)。
(1)10%を下限とした株式の取得
(2)内部収益率(Taxa Interna de Rentabilidade)の増加に応じ,持ち分の追加
5 地元住民に対する鉱業権保持者の義務
鉱物資源開発においては,対象地域における地元住民の持続可能な社会経済発展に貢献し(第16条1項),また,住宅の損失や移住を強いられる住民は,鉱業権保持者によって新たな住宅を補償される権利を有します(第17条1項)。
また鉱業権保持者は,アンゴラ人の雇用および職業訓練を保障しなければならず(第18条),さらに,提供に際する価格(10%を上回らない)と期間(8日を過ぎない)について定められた条件内で,国産の製品,サービス,資材等を優先的に使わなければなりません(第19条)。
6 戦略鉱物とは
本法では,経済的重要性や開発における技術的専門性が認められる場合,戦略鉱物として定める旨述べています。
政府は戦略鉱物を定める権限を有し(第21条1項),公布の段階で,ダイヤモンド,金,放射性鉱物を戦略鉱物として挙げています(同条2項)。
戦略鉱物の鉱業活動に関する鉱業権は,政府が設立する特別公共団体に排他的に譲許されます(第23条1項)。また,戦略鉱物に対する投資手続は,特別規定が設けられています(第164-166条)。
7 鉱業権に関する一般規定
アンゴラの管轄下にある,あらゆる場所の鉱物資源は,所有権を国に属するものと定めています(第42条)。本法に則って採掘された産出物は,その採掘権および探鉱権を所持する団体のものとなります(第43条)。
また,監督機関は,しかるべき理由のもと,30日の期間をもって関係者に通達し,鉱業活動の停止を命ずることができます。また,鉱業権者に対し,活動縮小を求めることも可能です(第53条)。
8 鉱業権保有者の責任
本法では,以下の項目について鉱業権保有者の責任として規定しています。
(1)衛生,健康,安全,訓練等
鉱業権者はその活動にあたり,関係省(地質鉱山・鉱業省,行政雇用社会保障省,保健省)により認可された監督機関のもと,現場の危機管理,業務上の健康と安全,衛生等を確保しなければなりません(第59条)。また,職員の訓練についても定められています(第60条)。
(2)手数料・料金(第61条)
本法のもと,公的機関による第3者へのサービスは,手数料および税の対象となり,その額は財務大臣および地質鉱山・工業大臣によって定められます(第61条)。
(3)保証金(caução)(第62条)
権利を有する民間団体は,契約上の義務履行のため,保証金を払うことが求められます。その額は,①研究,採掘,調査,査定の段階では投資額の2%以下,②採掘の段階では,4%以下,と定められています。契約署名の前に支払いが求められ,研究,採掘,調査,査定が終わった段階,または採掘の35%が終了した際に,払い戻されます。
(4)環境保全(第63-71条)
(5)土壌の利用における責任(第72-77条)
(6)爆発物の利用に関する責任(第78-88条)
9 鉱業権の申請方法
鉱業権の申請は,原則,国内または海外の個人または法人が可能です(第96条)。
鉱業権の譲許は,(1)監督機関による入札か,(2)監督機関に対する申請,を通じて行われます(第97条1項)。入札が行われない場合,鉱業権は,技術的・財務的必要能力の認められる,最初の申請者に譲許されます(第97条4項)。
(1)入札について
監督機関は,①調査によって,地質ポテンシャルの高い地域が見つかった場合,または②戦略鉱物が扱われる場合,その鉱業権譲許に対し,入札を行わなければなりません(第98条1項)。
管轄機関は,最低でも年に1度,1~3月の間に入札情報を公開しなければならず(同条2項),官報または当地日刊紙を通じ知らされます(第99条2項)。
(2)鉱業権申請について(第101条)
鉱業権の申請は,管轄省庁に対し,必要書類や証拠となる資料をそろえた上で行われます(第100条,101条)。
また海外投資についても,指定される書類をそろえ,技術的・財務的必要能力を証明する必要があります(第101条4項)。
申請に対する回答は,申請の先着順に審査され(第103条1項),30日以内にその可否について告知されます(同条2項)。認可の場合は,手数料や料金に関し,通知日から15日の支払期間が設けられます(同条3項)。
申請が認可された場合,地質鉱業公共サービスは,鉱業権申請登録証明書(CRPCM)を発行します(第106条)。
10 鉱業活動への投資・パートナーシップ
(1)一般規則
本法は,国内・海外の企業による,鉱業活動への投資も対象としています。この場合,民間投資法(法令20/11号)や為替法は,補助的に適用されます(第108条,第157条)。
法令では,投資契約において,探査権(第8章セクション2)と開発権(同章セクション3)について定めています。
探査権・開発権について,特定の要件を満たすことを条件に,法が認める形での提携を経た企業・商業団体に対し譲許されます(第109章1項)。特に,業務提携の設立については,アンゴラ国の企業が優先されます(第109条2項)。
鉱業に対する投資は,監督省庁によって承認された投資契約を通じて実施されます(第111章1項)。投資額が2500万米ドル以上になった場合は,鉱業投資契約承認の権限は,行政府長に帰することとなります(同章2項)。また,鉱物の産業開発に対する権利譲許契約の交渉は,監督省庁の任命によって設立された交渉委員会(Comissão de Negociações)と行います(第112章)。
なお,鉱業投資契約を結んだ投資団体に対しては,その販売権も認められます(第114条)。
探査の段階において,投資家は,投資の意思を宣言する必要があります。宣言にあたり,第106条で定めたCRPCMの写しや必要情報を管轄機関に提出することが定められています(第115条)。また開発を始める前には,技術的・経済的・財務的実現可能性の調査(EVTEF)および環境インパクトの調査(EIA)を提出する必要があります(第116条)。
(2)探査に対する鉱業権
確認探鉱,探査,探鉱,評価に対する鉱業権は,本法規則に従うと定められています(第118条1項)。
探査に対する鉱業権の期間は,5年が与えられ,1年ごと,最長7年まで延長可能です(第125条1項)。ただし,最初の5年が終了した際に,認可された地域の50%,延長期間終了時に監督機関が決定する地域を手放す(libertar)必要があります(同条2項)。
探査に対する鉱業権の発行は,鉱業投資契約が監督機関によって認可され,税・手数料等(第89条)が支払われた後,監督機関の長によって行われます(第126条1項)。監督機関の長は,そのコピーを,探鉱を行う州政府に送り,周知します(同条2項)。投資が,海外資本輸入,優遇措置の提供,税の一部免除等を伴う場合,監督機関は財務省やANIPに必要な書類を送付し,しかるべき手続きを行う旨定められています(同条3項)。
(3)開発に対する鉱業権
投資契約にもとづく探査および評価フェーズで発見・評価された鉱物資源を開発する権利は,同フェーズの活動を実施した団体に与えられます(第128条1項)。
すでに確認および評価されているが,投資契約において発見された鉱物資源でない場合,監督機関によって入札にかけられます(第128条2項)
開発に対する権利の譲許は,第116条で定めるEVTEFとEIAを主な基準として判定されます(第129条)。特に,EVTEFでは,収益の50%を上限とし,鉱業開発にかかる費用を計上する必要があります(同条第3項)。また,開発段階での資本投資は,投下資本の50%までその配当を得ることができます(同条第5項)。
開発に対する鉱業権は,探査および評価の期間を含め,最大35年間付与され(第133条1項),管轄機関の長の決定により,10年単位で更新が可能です(同条2項)。
また鉱業会社は,商法(legislação comercial)で定められるものに加え,投下資本の5%の法定準備金(reserva legal)をたてることが義務づけられています(同条3項)。開発に対する鉱業権が失効された後の鉱区に対する権利と義務は,政府が負い,法定準備金の50%は政府に移行されます(同条4項)。ただし,鉱区における環境修復は政府の義務に含まれず,元の権利保持者が担わなければなりません(同条5項)。
海外投資に対しては,特別手続が定められています。契約承認,権利発行,財務省への契約書(および権利書)の写し送付後,監督機関は契約の写しをANIPに送付し,ANIPはそれを受け,民間投資登録証書(CRIP)を発行し,BNAに対し資本輸入許可証(Licenciamento da importação de capitais)を申請します(第156条)。
(※民間投資証書については民間投資法概要もご参照ください。)
11 鉱業投資のプロセスと期間
鉱業民間投資プロセスの手続きにかかる期間は,以下のとおり定められています(第158章)。
(1)鉱業権の申請に対する回答: 申請受付後,30日以内
(2)CRPCMの発行: 申請が可能(viavel)と認められて,15日以内
(3)交渉委員会の創設: CRPCM, EVTEF, EIA, 投資意思宣言の提出後,30日以内
(4)鉱業権契約の交渉: c)の後,180日以内
(5)交渉記録(Acta das Negociações)の作成と管轄機関への送付: d)の後,8日以内
(6)閣僚による契約承認: e)の書類受理後,8日以内)
(7)鉱業ライセンスの発行: f)の後,8日以内
(8)財務省,州政府,ANIPに対し契約の写しの発送: g)の後,8日以内
(9)ANIPによるCRIPの発行およびBNAへの写しの発送:h)の書類写しを受理して,8日以内
(10)資本輸入ライセンスの発行:BNAがi)の書類写しを受理して,15日以内
12 鉱物販売権について
鉱物権保有者は,同法の定める鉱物販売条件および売買契約の規定に従うことを義務づけられた上で,鉱業開発の産出品を販売する権利が認められています(第188条)。その産出品の輸出は,商業省管轄機関の許可や税関による通関手続の対象となります(第189条)。
戦略鉱物の販売・輸出等は別途規定されています(第191-198条)。
13 鉱業活動に対する税制
本法では,活動内容に応じ,以下の納税義務を定めています(第239条)。
(1)所得税
(2)鉱物資源税(ロイヤルティ)(imposto sobre o valor dos recursos minerais)
(3)鉱区税(taxa de superfície)
(4)手掘り掘削税(taxa artesanal)
(1)所得税
鉱業における所得税は25%で,その内5%は鉱業活動地域を管轄する自治体に割り当てられます(第245条)。
以下の減価償却費(encargos de amortizações)は,指定される年率を上限に,費用・損失として定められています(第249条)。
(a)鉱業用固定設備(equipamentos mineiros fixos):20%
(b)鉱業用移動設備(equipamentos mineiros móveis):25%
(c)鉱業用機材・用具(ferramentas e utensílios):33.3%
(d)キャンプ用機材(equipamento de acampamento):20%
(e)無形固定資産(探査・探鉱費用を含む):25%
また鉱業開発権保持者は,鉱業活動を通じ損傷された環境の回復・修復のため,準備金の積み立てが義務づけられています。その率・上限は,技術的・経済的実現可能調査によって定められます(第250条)。
(2)鉱物資源税(ロイヤルティ)
鉱物資源税は,取り出された鉱物の価格(valor)にかかります(第254条1項)。鉱物価格は,実際の販売額の平均値によって決定されますが,それが不可能な場合,国際価格の平均値によって定められます(第255条2項)。
また,具体的にかかる税率は以下のとおり定められています(第257条)。
(a) 戦略鉱物 5%
(b)宝石用原石および貴金属(pedras e minerais metálicos preciosos)5%
(c)準宝石用原石(pedras semi-preciosas)4%
(d)金属製鉱物 3%
(e)建築資材 2%
(3)鉱区税
鉱区税は,鉱区の面積(㎢)にかかります。税率は,鉱物種,年度によって以下のとおり定められています(第261条)。
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ダイヤモンド |
戦略鉱物 |
宝石用原石
および貴金属 |
準宝石用原石 |
非貴金属製鉱物 |
建築用鉱物 |
1年目 |
7ドル |
5ドル |
5ドル |
4ドル |
3ドル |
2ドル |
2年目 |
12ドル |
10ドル |
10ドル |
7ドル |
5ドル |
4ドル |
3年目 |
20ドル |
15ドル |
15ドル |
10ドル |
7ドル |
6ドル |
4年目 |
30ドル |
25ドル |
25ドル |
15ドル |
12ドル |
10ドル |
5年目 |
40ドル |
35ドル |
35ドル |
20ドル |
18ドル |
15ドル |
14 関税 鉱業活動に,直接かつ排他的に使用される機材の輸入について,印紙税等を除き,税関一般手数料(emolumentos gerais aduaneiros)は免除されます(第269条1項)。
参考資料・リンク
- U.S. Geological Survey, 2011, Africa and Middle East Mineral Information. (http://minerals.usgs.gov/minerals/pubs/country/africa.html)
- JOGMEC, 2012, 世界の鉱業の趨勢2012 アンゴラ.
(http://mric.jogmec.go.jp/public/report/2012-04/angola_12.pdf)
- JOGMEC, 2004, 平成16年度資源開発環境調査アンゴラ共和国.
(http://mric.jogmec.go.jp/public/report/2005-10/angola_05.pdf)
- ANIP(鉱業法本文)
- アンゴラ地質鉱山省
- ENDIAMA
- Ferrangol
大使館関連ページ
- JOGMECとアンゴラ政府が共同で鉱物資源分野の現地調査を実施!
- JOGMECボツワナ事務所リモートセンシングセンター副所長による現地レポート
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